筆ペン作品(手本)集~百花繚乱~

聴暁角

 辺地に霜が降りて、昨夜のうちに関塞の楡の葉を落としてしまった。暁を知らせる角笛の音、そして城の真向かいにはポツンと一片の月。数限りない辺地の大雁の群も、笛の音に感動して、むげに飛び過ぎるのをためらっているらしい。何しろ秋風が「小単于」の曲調の中に吹き入っていよいよ悲しい音となったのだから。